この文章は、筆者が勤務している組織内のとある部署より依頼を受けて5分程度行った講話の内容です。学問的には特別新しい見識はないと思います。本文を引用する際には、文献欄に以下の内容を記載して下さい。
小坂守孝(1999)ストレス解消について. http://www.websitemk.jp/psyc/stress991001.html


ストレス解消について(1999年10月1日)


 今日は心の健康にまつわるお話をします。皆さんは「ストレス」という言葉を1度くらいは聞いたことがあるのではないかと思います。ストレスというのは、日常生活の中でいろいろな刺激を受けて、その結果心や身体が緊張している状態をいいます。「適度なストレスは人生にとって必要だ」という人もいますが、会社で働いているわれわれにとっては、度を越えるストレスを抱えることが少なくありません。ストレスの原因になるのは、人事異動、業務上のミス、上司や部下や同僚とのトラブルのような仕事上の出来事はもちろん、仕事以外でも、近親者が亡くなったり、引越し、借金、結婚、家族との同居や別居など、それまでの自分の生活にいろんな意味で大きな変化をもたらす出来事があります。その他、日常の小さな出来事でもそれが積み重なれば十分ストレスになります。
 このような状態が続くと精神的に参ってしまうばかりではなく、身体の方の病気にもかかりやすくなります。体がなんとなくだるい感じだったり、妙に気分が高ぶっているようなときには、知らないうちにストレスがかかっていると言えます。
もちろんストレスがかかりすぎないうちに自分で解消して、より調子が崩れるのを予防できればそれに越したことはありません。よくストレス解消法として「休養をとる」「気分転換をする」と言われますが、仕事が忙しくてなかなか休養を取れなかったり、気分転換するための趣味が見つからない場合もあると思います。
 そこで一つのポイントとして「自分にとって気持ちのいいこと」を探してみましょう。具体的に「友人に話す」「散歩をしろ」「音楽を聴け」と言う人もいますが、人それぞれ必ず向き不向きがあります。大勢で騒ぐのが好きな人もいれば1人でいるのが好きな人もいます。運動が好きな人もいれば静かにじっとしている方が好きな人がいます。音楽が好きな人もいれば絵の方が好きな人がいます。あくまで「自分にとって何が気持ちいいか」で選べばいいと思います。普段の仕事と反対のことをしてみる方法もあります。例えばデスクワークが多い人は少し身体を動かしてみたり、逆に現場での立ち仕事が多い人は座ったり横になったりしてくつろいでみてもいいかも知れません。人と喋る仕事が多い人は誰もいないところで一人になるのもいいかも知れません。このようにいろいろとやってみて、気持ちがよければ続けてみて、気持ちよくないならやめて何か違うことをしてみましょう。
 ただし、自分にとって一見気持ちがいいことであっても、例えばお酒やたばこは量が多すぎると最後は自分の体を壊してしまいます。また、競馬などのギャンブルや買い物も、気をつけないとあっという間にお金がなくなってしまい、生活が苦しくなります。このように、自分の身体や生活を壊すものは、それ自体がストレスにつながってしまいます。
 また、誰かに八つ当たりするなど他の人に迷惑をかけたり、法に触れるような事であれば、結果的に人間関係や自分の社会的な立場が危うくなり、そのことがまた自分にとってストレスになります。ストレス解消をめざして余計ストレスを抱え込むのでは意味がありませんので、くれぐれも注意しましょう。
 そのほかには、誰でもできるストレス解消法の一つとして「リラクゼーション」と呼ばれるものがあります。これは、身体の方からはたらきかけて、心や身体の緊張をほぐすものです。これにはいろいろな方法がありますが、日常生活の中でも比較的簡単にできるのが、「息をはく」「筋肉をゆるめる」というものです。
 心に不安があったり緊張しているときは息が浅くなっています。息を整えることで心の安定やリラックスした状態をつくることができます。そこで深呼吸をやってみます。呼吸という字は「息を吐く」という意味の「呼」が先にきて「息を吸う」という意味の「吸」があとにきます。つまり、呼吸は吐くことから始まります。ここでは深呼吸の中でも「三呼一吸法」を紹介します。まず、フッ、フッ、フゥー、と息をすべて吐き出します。息を全て吐き出すと自然と空気が入ってきます。意識しなくとも自然に空気が身体に入ってくるのを十分に感じとって下さい。実際にやるときには3分間位続けてみて下さい。
 次は筋肉をゆるめます。精神的に緊張すると、無意識のうちに身体の多くの筋肉が収縮します。このような筋肉の収縮が続くことが不健康の原因となります。そこで逆に、時々筋肉を十分にゆるめることができれば『身体も心もリラックス』できます。ただし、筋肉はただ単にゆるめようと思って力をぬいてもゆるめることができません。むしろ、筋肉をいったん緊張させてその緊張感を自覚することによって、より一層その筋肉をゆるめることができます。ここでは、大きく伸びをしてみましょう。胸のあたりや両手のいたるところが緊張する感じがつかめるでしょうか。5〜10秒程度伸びをしたままの格好から、伸びをやめて手を下ろすと、身体がゆるむ感じがつかめると思います。これは、皆さんが無意識にやっている「筋リラクゼーション」ですが、事あるごとに意識してやってみましょう。
 以上に挙げたストレス解消法は、あくまで予防的なものです。インフルエンザにかかってしまったあとでは予防接種に意味がないように、実際にストレスを受けて心身がまいっている状態では、なかなか効果が出ないことが多いです。そうしたら予防的な手段ではなくて、別の治療的な方法を考えなくてはなりませんので、メンタルヘルスの専門家にいち早く相談して下さい。予防の段階でも治療の段階でも早いうちに手をうつことが大事です。


(要点)
・身の周りの変化は知らないうちに忍び寄るストレス
・身体・生活・人間関係を壊さない範囲で、自分にとって気持ちのいいことを探す。
・一番簡単なリラックスは「深呼吸」と「伸び」
・自分でやってみてだめだったら迷わず専門家へ


(文献)
神田橋條治(1999)「精神科養生のコツ」 岩崎学術出版社
菊地章彦(1996)「みんなでメンタルヘルス:らくらくリラックス」働く人の健康づくり協会